相続にまつわる話は、あちこちでよくお聞きのことと思います。だいたいどれもが血族間のまさしく血みどろの争いですが、今回はそんな事ばかりでも…。
夫が亡くなり、四五日も過ぎたので、同居の一人娘と半分ずつ遺産(自宅地のほかに土地と預貯金)を分割しようと相続登記を司法書士に依頼された夫人は、戸籍調査で、始めて夫にもう一人の娘さんがいたことを知りました。夫は再婚だったことをはじめて知ったのでした。聞いたこともなく、会ったこともないもう一人の娘さんとどのように遺産分割の話を進めて良いかわからず、法律事務所に相談に来られました。遺産分割では、親子間ですらもめてしまうことがあります。まして、他人ですから、心配もことさらです。
被相続人の近況と死亡原因、依頼者が今始めて相手方のことを知ったことを事実どおり述べ、元金約100万円の郵便貯金を承継してもらうことで遺産分割に合意してもらえないかまず通知してみました。説明にこちらから訪問してもよいと一筆加えておきました。すぐに前妻の夫から連絡があり、「親戚にはとやかくいう人もいるが、私にまかせてもらった。そちら側のいうとおりで協議を成立させてください。自宅には伺いませんが、墓地の住所地だけ教えてください」ということでした。この方は、前妻の3番目の夫で、前妻の娘さんと養子縁組されていました。しかも娘さんは、神経を病んで、現在自宅療養中とのことでした。
遺産分割交渉のテクニックは、隠し事をせず理にかなって誠心誠意をもって接するということが大切かも知れませんが、それでも相手の人格が決定的な場合も多いようです。