事業者が運営している施設(オフィス、店舗、工場、駐車場・駐輪場など)内で落し物が発見された場合の取り扱いについて考えてみたいと思います。
施設利用者(店舗に買い物に来た人など)が落し物を拾ったときは、拾った時から24時間以内に、(警察ではなく)施設運営者に落し物を提出する必要があります。24時間以内に提出しなかった場合、施設利用者は報労金・落し物の所有権を取得する権利を失います。
落し物の提出を受けた施設運営者は、落し物を拾った人が従業員か施設利用者かを確認し、施設利用者の場合は、住所、氏名、拾った場所、日時、拾った物、報労金・所有権を主張するか放棄するかの意思などを確認する必要があります。
従業員が拾った場合は、施設運営者が落し物を拾った者になり、報労金・所有権を取得する権利も、(従業員ではなく)施設運営者に帰属します。
不特定かつ多数の者が利用する施設(店舗、駐車場・駐輪場など)の運営者は、提出された落し物について、
(ア) 落し物の種類、特徴、
(イ) 落し物が拾われた日時、場所
を記載した書面を備え付け、いつでも関係者に自由に閲覧させなければなりません。
施設運営者は、落し物の提出を受けた日から1週間以内に落し物を警察に提出する必要があります。
落し物を拾った施設利用者は、落し物の価値の5%〜20%の範囲で落し物をした人から報労金を受け取ることができます。ただし、施設内で施設利用者が拾得した場合は、施設利用者と施設運営者が報労金を折半する(それぞれ2・5%から10%の範囲)ことになります。
なお、報労金は、落し物が所有者に返還された後、1ヶ月以内に請求をしないと、その後は請求することができなくなります。
警察に提出した後、3ヶ月を経過しても落し物をした人が判明しない場合、施設利用者が拾った場合は施設利用者が、施設運営者(従業員も含む)が拾った場合は施設運営者が、落し物の所有権を取得します。
但し、3ヶ月を経過した後2ヶ月以内に、落し物の所有権を取得した者が受け取りに来なかった場合、落し物の所有権は埼玉県に帰属することになります。
ごみと同視できるもの以外は、すべて警察に届け出なければなりません。法律上は、これに例外はないのですが、いちいち警察に届けるのは面倒なので、もっと簡単な方法はないのかという質問を受けることがあります。法的に問題がないとはいいきれないのですが、次の条件を満たせば、落し物をした人が、落し物の所有権を放棄したものとして、警察に届け出ず廃棄処分しても可能なように思えます。
① 落し物について、
(ア) 落し物の種類、特徴
(イ) 落し物を拾った日時、場所
を記載した書面を備え付け、これをいつでも関係者に自由に閲覧させる。
② 届け出をした施設利用者は、報労金・所有権を取得する権利を放棄している。
③ 遺失者から、損害賠償請求を受けることがないような価値のない物である。たとえば、遺失物法で定める「日常の用に供され、かつ広く販売されている物として政令で定めるもの」である。
→ 傘、衣類、ハンカチ・マフラー・ネクタイ・ベルトその他衣類とともに身に付ける繊維製品または皮革製品、履物、自転車
ただし、自転車は価値があることあるので注意。
④ 3ヶ月保管すること。
※ 警察で3ヶ月保管後に、落し物を拾った人に所有権が移転するので、3ヶ月保管するというのが一つの目安になり得る。