企業と消費者の契約の場合、たとえば、「消費者の利益を一方的に害する条項は無効とする」(消費者契約法)などの法律があって、契約でどのように決めても、法律の力によって消費者が守られるということが多いと思います。

しかし、企業と企業の契約の場合は、下請法に該当するような例外的な場合を除き、契約で決めたどおりになるのが原則です。締結した契約書の内容がこちらに非常に不利な場合でも、契約書で決めたとおりになります。

例えば、列車が遅れたことが原因で納品が遅れた場合、契約書で「納品が遅れた場合、受注者は損害賠償責任を負う」となっていると、列車が遅れたことが受注者とは何の関係がなくても、受注者は発注者に対して損害賠償責任を負う可能性が高くなります。「受注者の責に帰すべき理由により納品がおくれた場合、受注者は損害賠償責任を負う」となっていると、列車が遅れたことが受注者の責任でない限り、受注者は損害賠償責任を負うことはありません。

また、「受注者は発注者に対して、発注代金の限度でのみ損害賠償責任を負う」となっていると、発注代金が100万円なら、たとえ発注者が1億円の損害を被っても100万円しか請求することができません。

契約書はどちらか一方に有利になっていることがほとんどです。そして、契約書の文案を持ってきたのがA社なら、A社に有利になっています。

したがって、契約書の内容をよく理解し、こちらに不利と思うものは相手方と交渉して変更するようにしなければなりません。どこまで変更できるかは相手方との力関係によります。

契約書の検討をする場合、弁護士などの専門家にチェックをしてもらうことも場合によっては必要です。ただ、専門家のチェックと言っても、その専門家は、契約書の文案作成に至るまでの取引の経緯・内容を詳しく知っているわけではありません。漠然としている条項、こちらに不利な条項、付け加えるべきなのに欠けている一般的な条項についてはチェックすることができますが、(付け加えておいた方がよい)その取引特有の条項までは気が付かないことが多いものです。
その意味で、専門家にチェックを依頼しても、貴社自身の詳しいチェックは絶対に必要です。