このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事しているオーナーや管理会社に向けて、基礎知識から応用知識、法令、紛争上の注意点等の有益な情報を提供しております。
はじめに
このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事しているオーナー(事業者含む)や管理会社に向けて、基礎知識から応用知識、法令、紛争上の注意点等の有益な情報を提供しております。
賃貸不動産管理業務とは何ですか?
「そもそも、賃貸不動産管理業務とは何ですか?」
という質問について、ご回答します。
二つの管理業務について
結論から申しますと、①ビルメンテナンス業務(建物や設備のメンテナンス)、②プロパティマネジメント業務(入居者対応等のマネジメント)、この二つの業務(サービス)から成り立ちます。
想像すると分かりやすいですが、ビルを持っているオーナーさんが居室を人に貸す場合、そもそも、そのビルがきちんと保守管理されており安全に居住できる状態でなければなりません。いわゆる廃墟・廃屋のようでは、誰も借りる人がいないのは容易に想像できます。そのために、適切にビルを管理するため、①ビルメンテナンス業務があります。
次に、どんなに立派なビルでも、入居者がいなければ意味がありませんから、入居者を募集し、賃貸借契約を結び、賃料をもらい、解約時にはきちんと退去、つまり出て行っていただくことが必要です。そのために、②プロパティマネジメント業務があります。
①ビルメンテナンス業務とは?
ビルメンテナンス業務とは、マンション、アパート、一戸建て、賃貸物件にはいくつかありますが、それらの建物、及びその敷地(土地)を管理する業務です。
例えば、以下のような業務一覧があります。
・清掃業務
玄関や廊下、エレベーター等の共用部が清潔に保つ。
・衛生管理
ゴミ置き場の設置、清掃し、衛星を確保する。
・保守管理
エレベーター、消火設備、非常ベル等の安全を日頃から点検し、建築基準法及び消防法に則り法定点検を実施し、安全を確保する。
・補修
利用による経年劣化等により外壁、内装、給水・排水、ガス・電気等の設備について、補修工事、設備交換工事を実施する。
・大規模修繕計画
一定期間後、大規模修繕に向けて計画立案、修繕工事の管理を行う。
・原状回復工事等
賃借人が退去した後の原状回復工事等を実施する。
ビルメンテナンス業務を行うには、様々な外注先を確保するほか、建築基準法、消防法、原状回復におけるガイドライン、その他関係法規の知識、理解が必須であり、建物に関する知見も求められます。
ビルメンテナンスを怠れば、新規入居者減少、退去が相次ぐなどし、空き室が目立つと益々人気が下がりますので、オーナーにとっては致命的です。
②プロパティマネジメント業務について
プロパティマネジメント業務(略してPM業務)とは、マンション、アパート等の賃貸住宅に入居している契約者である賃借人、テナントに関する管理を行う業務です。
例えば、以下のような業務一覧があります。
・空室の入居者募集業務
どのような募集方法(不動産サイトの掲載、写真撮影等)を活用するか、リーシングプランを立案し、仲介業者の選定、営業、紹介等の様々な方法により入居者を募集する業務です。
・賃貸借契約の締結等の契約業務
賃貸借契約の締結に必要な、賃貸借契約書、重要事項説明書、個人情報等の同意書、住宅紛争防止条例に基づく説明書等、さまざまなトラブルに対処できるように契約書類を準備する業務です。
・賃料(家賃)の回収に関する業務
賃料(家賃)の回収、入金との突合せ、滞納者に対する催促や家賃保証会社に対する報告等を行う業務です。
・入居者からのクレーム等に対処する業務</h4
入居者から、賃貸物件の故障等の連絡、トラブル(騒音、ゴミ、振動、入居者間の事故等)、クレーム対応につき、対処等を行う業務です。
・更新業務
更新時期が近づくと更新の案内を出すほか、更新に際して変更事項の合意、覚書を作成する必要があれば作成する、更新料を請求・受領する等の業務です。
・解約受付、建物明渡の立会業務
解約の受付、明渡日の決定、立会等を行う業務です。退去時の状態を賃借人ときちんと確認し、修繕、原状回復が必要な範囲を合意するのも重要な業務でしょう。
・不良入居者に対する対応業務
賃料を支払わない、その他問題のある不良入居者に対して、催促、解約、退去等を進めるための対応を検討する業務です。
プロパティマネジメント業務を行うには、様々な外注先を確保するほか、民法、借地借家法、原状回復におけるガイドライン、その他関係法規の知識、理解が必須であり、建物に関する知見も求められます。
ソフト面全般を担当するこの業務を怠れば、様々な法的トラブルに見舞われ、一気に不採算物件となるでしょう。
賃貸管理業務はどのような流れ(業務フロー)で行いますか?
次に、賃貸管理業務の流れ(業務フロー)について、時系列を意識しながら見て参りましょう。ビルメンテナンスは常時、行う必要がありますので割愛し、ここでは、プロパティマネジメント業務についてお話しします。
・リーシング業務(空き室募集)からスタート
とにもかくにも、入居者がいないと、賃貸業務は成り立ちません。そのため、まずは、空き室に入居する入居者を募集することから始まります。一等地であれば別ですが、空き室募集のために、様々な活動をし、魅力を押し出すために、様々な努力が必要であり、管理業者の力量(営業力)が問われる場面です。人口減少が時流ですから、より近隣の物件と差別化し、魅力を発信できるかが要でしょう。
・賃貸借契約締結サポート業務
賃貸の依頼があった場合、賃貸借契約の締結や重要事項説明等の契約締結業務自体は、仲介の不動産業者が行うことが多いでしょう。もっとも、そのような契約内容にするかは、オーナー、管理会社の方で吟味する必要があります。そのため、契約に精通した弁護士と連携(顧問契約を含む)が取れているかが重要です。杜撰な契約内容ですと、後にトラブルになり、オーナー側が敗訴するということもあります。
・家賃(賃料)管理業務
入居者が決まったら、入居者からの所定の敷金、礼金を預り、毎月、賃料を回収する必要があります。賃貸借契約は、継続的な契約関係に基づく信頼関係で成り立っており、不動産の使用を許可する代わりに、不動産使用の対価を得ることが契約の本質です。そのため、賃料回収は、契約上も重要な要素であり、オーナー様にとって最も大切な点といえます。
・賃貸借契約更新業務
多くの賃貸借契約は、期間を定めており、更新があります。更新が近づいてきたら、更新するかどうか、更新する場合には更新料の請求を行います。
・賃貸借契約解約精算業務
入居者は、更新をしない、もしくは契約期間の中途で解約することがあります。その場合の解約の受付方法、退去日の調整、退去日の立会等を行い、入居者との精算をします。オーナーとしたら、賃料不発生期間が短いに越したことはありませんので、入居者が退去し、その後速やかに新たな入居者が入居することに関心があるでしょう。
・オーナーに対する報告業務
管理会社は、オーナーに対して、家賃の回収状況をはじめ、業務内容を報告し、管理報酬を受け取ります。報告内容としては、お金の流れはもちろん、物件の稼働(入居)状況、更新や解約の対応内容、募集活動の状況、クレームなどの報告を行う必要があります。
オーナーと不動産管理会社との契約内容について
・二つの契約類型について
不動産賃貸管理について見てきました。
ごく小規模な物件やオーナーが専門家・管理を行う法人である場合を除き、オーナー様自身がこれらの業務を統括するのは極めて難しいということはお分かりになると思います。
そのため、多くのオーナー様は、管理会社と契約を締結し、ビルメンテナンス業務やプロパティマネジメント業務を委託しております。
ここでは、オーナーが不動産管理会社と契約を締結するに当たり、二種類の契約類型があることを簡潔にご説明します。二種類とは、媒介契約と代理契約です。
両者の違いは、一言でいえば、関わりの度合いが異なります。
媒介契約とは?
媒介とは、「間に入ること」を意味します。
つまり、媒介契約の場合、不動産管理会社が入居者募集や契約締結のサポートをしますが、あくまで、オーナー(賃貸人)が判断し、オーナー自身が入居者(賃借人)との間で、契約を締結することになります。
いわば、不動産業者は仲介役のようなイメージです。オーナー様において、借主についてのこだわり、条件を求める場合に向いています。
代理契約とは?
代理とは、「代わること」を意味します。
つまり、代理契約の場合、不動産管理会社がオーナーの代理人として入居者募集や契約締結のサポートを行い、オーナーの代理人として、直接、不動産管理会社が入居者(賃借人)との間で、契約を締結することになります。
未成年の子が預金口座を作るときに親御さんが口座開設の手続を行いますよね。それと同じで、オーナーの代わりに契約を締結する権限があるのが特徴です。もちろん、代理人の契約行為の効果は、オーナーに及びますので、法的には、オーナーと入居者との間に契約の効力が及びます。
賃貸住宅経営(サブリース方式)とは?
ビル等を所有するオーナーは、多数の部屋を入居者に貸すため、膨大な賃貸借契約の数になります。その分、契約の手間、賃料不払リスク、退去時の問題等に直面するリスクも増えることでしょう。
そのような膨大な手間を避けるため、サブリース方式という方法があります。
・サブリース契約
サブリース契約は、オーナーが不動産会社にビルを丸ごと賃貸し、不動産会社がビルの入居者に転貸借を行うことを意味します。
その結果、不動産会社は、自ら入居者を募集し賃貸借契約を締結し家賃を受け取ります。受け取った家賃の一部をサブリースによる保証家賃としてオーナーに支払いますので、オーナーとしては安定した賃料収入を不動産会社から保証され、入居者対応等の煩雑さを不動産会社に委ねることができます。不動産会社は、実際に受け取った賃料とオーナーに保証した賃料との差額を受け取ることができるので、収益性があるといえます。
特定賃貸借契約(マスターリース契約)とは?
よく、「サブリースとマスターリースは何が違うの?」というご質問をお受けしますので、簡潔に回答します。
・マスターリース契約
結論から申しますと、上述したサブリース契約とスキームは同じであり、その内、マスターリースとは、オーナーと不動産会社との間の一括借上げ契約のことをピンポイントで指します。
簡単に図式化すると、以下のとおりです。
このスキームを全体として「サブリース」と呼ぶことがあります。
関係法令について
賃貸不動産管理に関わる法律(ガイドライン含む)は、多数あります。
・民法
・借地借家法
・賃貸住宅管理業法
・建築基準法
・消防法
・原状回復におけるガイドライン
今後、これらの法律やガイドラインについても、解説を加える予定です。
紛争の生じやすい類型と注意点
弁護士として仕事をしていると、やはり最もご相談が多いのは、家賃滞納に関するご相談です。つまり、オーナー様や管理会社様から、「賃借人が家賃を支払わないので、追い出したいが、どうすればよいか」という質問を受けます。
結論から申しますと、家賃滞納は債務不履行であり、賃貸借契約の上で賃料の支払は重要な要素ですから、契約を解除し、明け渡しを求めることが可能な場合があります。しかし、その場合には、裁判例等に照らし、いくつかの注意点があります。
このような質問以外にも、多くの質問が寄せられております。
今後、さらに掘り下げて、紛争が生じやすい類型やその注意点、紛争が生じた場合の対処法や実例、さらには未然の対策内容について触れて参ります。
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