飲食業の資金繰りで注意しなければならない点、一時的な資金ショート、売上が上がらないことによる資金ショート、また、資金繰りに行き詰まった場合の方策について述べてみました。

1 飲食業の資金繰り

⑴ 資金繰りとは

飲食業の場合、支出の大きな部分を占めるのは、材料の調達費、家賃・光熱費、人件費などの経費、また、借入金の返済、源泉税・消費税などの税金の支払いです。
反対に、収入の大きな部分を占めるのは売上になります。

売上で得た現金から、経費の支払い、借入金の返済、税金の支払いをすることができるなら、資金繰りができていることになりますし、これができないということになると資金ショートを起こしているということになり、飲食業の経営が大ピンチということになります。

⑵ 注意しなければならない点

顧客からの支払いがカードで行われると、カード会社から現金が入っているのが少し遅れますし、また、あまりないかもしれませんが、顧客からの支払がツケになっていると、これも現金が入ってくるのが遅くなる原因になります。顧客がつけを払ってくれない場合、もちろん現金は入ってきません。
また、現金があると思っていても、源泉税・消費税などの支払をすることを見逃していると、突然、大きな金額の支払いをしなければならなくなります。

これらのことを理由として、比較的うまく行っていると思っても、一次的に、資金ショートする可能性がありますから、どの位の現金が毎月入ってくるのか、源泉税・消費税などの支払いも含めて、どの位の支出が毎月あるのかということは、常に認識していなければなりません。

お金の流れを把握するためには、資金繰り表を作成するのが有効と言われています。資金繰り表といっても、それほど複雑なものではなく、毎日、売上、材料の調達費を書き、また、発生するごとに、家賃・光熱費、人件費、借入金の返済、源泉税・消費税などを記載していきます。

⑶ 売上があがらないことによる資金ショート

一次的な見込み違いによる資金ショートならまだいいですが、開店当初、売り上げが上がらず、徐々に売上が上がってきたが、なかなか黒字にならず、資金ショートの可能性が出てきた、開店当初は売り上げが上がったが、その後、客足が遠のいてしまい、資金ショートの可能性があるというような場合は、事態は深刻です。

材料の仕入れにかかる費用を減らすと、メニューが減って顧問からの注文に答えられず、売上の機会損失になったり、また、味が落ちて、さらに売り上げが落ちる可能性がありますから、ここは、何をどの程度減らすのか難しいところです。
余分な従業員を抱えているときは、従業員を減らすことを考えなければなりません。

また、こういうことがありますから、開業時には少なくても3〜6ヶ月分の運転資金を用意しておくべきだと言われています。開店当初からうまく行き、その状態がずっと続くということは非常に難しいでしょうから、運転資金の用意は必須です。

⑷ 売上をあげる。

経費の削減には限界がありますから、一番しなければならないのは売上を上げることです。もちろん簡単にできることではなく、これができれば苦労はないのですが、顧客目線という点から言うと、ターゲットとなる顧客を明確にし、その顧客にとっての安くて質のよいメニューを提供するというのは大事かと思います。

例えば、少しはお金の余裕がある中年、初老の男性にとっては、若者が騒いている居酒屋には行きたくありません。酒を飲みに行くなら、1合900円とか1200円のうまい冷酒が置いてあり、高級食材を使っていなくても、出汁がきいた薄味の、冷酒に合う酒の肴が置いてあれば、その酒の肴が、1品800円、1000円であっても、ぜひとも行きたいところです。

ターゲットを明確にし、そのターゲットにとって、安くてよいものをそろえれば(どこまでの金額を安いというかはターゲットによって異なります)、リピーターも多くなり、売上も上がると思います。

⑸ 事業のお金と家計のお金を分ける。

事業の資金繰りがうまく行っているのかどうか、どこに問題があるのかどうかを明確に把握するためにも、事業のお金と家計のお金とは明確に分ける必要があります。もちろん通帳も別々にすべきです。

2 過去に何件か破産した会社を見てきて

私は弁護士なので、過去に何件か破産の申し立てをしたり、あるいは裁判所から選任されて破産管財人(破産会社の財産をお金に変えて、債権者に配当する人です)をしましたが、
・ 売上が上がらないために破産した、
・ 売上から経費を引くと、会社の自由になるお金というのは非常に限られているのに、そのことに気づかず、経費の削減を怠ったために破産した、
というような事例を見てきました。

飲食業の場合は、現金商売の側面が強いので、資金繰りに行き詰まり商売が続かなくても、破産までする必要は少ないのかもしれませんが、資金繰りに行き詰まる理由は余り変わらないように思います。
また、飲食業の場合でも、金融機関などへの借金を残したままで廃業すると、次の商売がうまくいっても、過去の借金をもとにして、裁判を起こされたり差押えを受けることもありますから、破産して借金をなしにする(免責と言います)ことも一つの方法です。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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