金融機関の破綻が中小企業に与える影響、またセイフティネット保証制度について述べ、さらに企業が事業を続けられない場合について述べてみました。

1 金融機関の破綻

SVB銀行の破綻、UBSによるクレディ・スイスの買収など、世界的に金融機関の破綻が続いています。今のところ、日本の金融機関に大きな影響はないようですが、今後、どのようなことが起きるかは分かりません。
企業が取引をしている銀行が破綻した場合、次のようなことが問題になります。

① 企業Bが銀行Aから借入れをしている場合

Aが破綻した場合でも、BがAに返済義務を負担していることには変わりありませんから、基本的にはBはAに返済を続けることになります。Aに破産、民事再生などが開始された場合は、管財人などの指示に従うことになります。

② 企業Bが銀行Aに預金を有している場合

金融機関の破綻時には、「預金保険制度」にもとづき、当座預金や利息のつかない普通預金(決済用預金)は全額保護の対象になります。

それ以外の利息のつく普通預金、定期預金、納税準備預金などは、預金者1人あたり元本1000万円までが保護の対象になります。それを超える部分については、破綻した金融機関から、破産手続による配当、民事再生手続きによる弁済などを受けることになります。

③ 銀行Aからの借入

Bは、Aから新たな借入をすることはできなくなります。そこで、BがAから短期借入れと返済を繰り返している場合、返済は約定どおりにしなければならないのに関わらず、借入をすることはできなくなるので、Bの経営に大きな影響が出てくる場合があります。
このような場合に備えて、次のようなセイフティネット保証制度があります。

2 セイフティネット保証制度

⑴ セイフティネット保証制度

取引先の倒産・リストラ、災害、金融機関の破綻などにより経営の安定に支障を生じている中小企業者であって、一定の要件を満たし、事業所の所在地を管轄する市町村長または特別区長の認定を受けた場合に、一般保証限度額の別枠として信用保証協会が保証を行う制度です。これによって。企業は新たな融資を受けることが可能になります。

経営の安定に支障を生じている要因として、セイフティネット保証制度では次の8つが挙げられています。

① 連鎖倒産の防止
② 取引先企業のリストラ等の事業活動の制限
③ 突発的災害(事故など)
➃ 突発的災害(自然災害など)
⑤ 業況の悪化している業種(全国的)
⑥ 取引金融機関の破綻
⑦ 金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整
⑧ 金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡

⑵ 金融機関の破綻

本稿のテーマである金融機関の破綻は上記の⑥ですが、ここで救済の対象となるのは、破綻金融機関と金融取引を行っており、適正かつ健全に事業を営んでいるにもかかわらず、金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るため、破綻金融機関などからの借入金の返済を含めた資金調達が必要となっている中小企業者とされています。

※ 他に問題となりそうな上記の①②について触れると、次のような場合を対象としています。

①について
→ 大型倒産が発生した際に、倒産事業者と取引のあった中小企業者が売掛金の回収難などで連鎖倒産することを防ぐことを目的としています。中小企業者の売掛債権額、倒産事業者との取引規模などに関して要件があります。

②について
→ 生産量の縮小、販売量の縮小、店舗の閉鎖などの事業活動の制限を行っている事業者と直接・間接的に取引を行っていることなどにより、売上などが減少している中小企業者を支援することを目的としています。対象中小企業者として、当該事業者との取引依存度および売上高減少割合などに要件があります。

⑶ 手続きの流れ

対象となる中小企業は、本店(個人事業主は主たる事業所)所在地の市町村(または特別区)の商工担当課などの窓口に認定申請書を提出し(事実を証明する書面などがあれば添付)、認定を受け、希望の金融機関または所在地の信用保証協会に認定書を持参のうえ、保証付き融資を申し込むことになります。

3 融資、補助金

金融機関の破綻と、それに関連してセイフティネット保証制度について述べましたが、中小企業に対する融資、補助金の制度には多くのものがありますので、ネットで検索する、付き合いのある税理士の方に相談するなどして活用するとよいと思います。

4 事業を続けられない場合

企業が事業を続けられない場合には、取引のある金融機関が破綻した場合以外にも、取引先が破綻した、代表者が死亡した、後継者がいない、あるいはそもそも事業がうまく行っておらず赤字が累積したなどがあります。

このような場合、会社の資産を売却することにより会社の債務を全額支払うことができるなら通常清算を行うことになりますし、会社の資産で会社の債務を完済できないという場合は、裁判所の監督のもと、特別清算、破産、民事再生の手続をとることになります。一般的には、ほとんどの場合、破産手続きを取っていると考えられます。
以上

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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