アパートや戸建てを貸している大家さんであれば、リフォームや建て替えを検討するのは当然です。そうした場合に問題になるのが「立退料」です。
今回は、「立退料」について、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、「不動産専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。

立退料について

立退料が問題になる場面とは

立退料が問題になるのは、建物や土地の賃貸人(大家さん、地主さん)が、
・建物の建て替えをしたい
・建物や土地を自己使用したい
・土地を高度利用したい
といった、賃貸人の側での建物や土地の使用の必要性が発生し、賃借人に明け渡しを依頼する場面が多いと考えられます。
もちろん、賃借人側に契約の解除事由(信頼関係の破壊。典型は、賃料不払い)がある場合には立退料の問題は生じません。

ちょっとブレイク

次のうち、普通賃貸借契約において正しいのはどれでしょうか。

①アパートのオーナーは、いつでも入居者を立ち退かせることができる。
②アパートのオーナーは、契約更新時、いつでも、法律上有効な更新拒否ができる。
③アパートのオーナーが、法律上有効に、契約を解約したり、更新拒絶するためには、
「正当事由」が必要。

「正当事由」とは

上記のクイズの正解は、③「正当事由」が必要、です。
では、「正当事由」とはどのようなことをいうのでしょうか。

「正当事由」は、借地借家法という法律に定められています。
そもそも、料金を貰って建物や土地を貸す場合の法律関係は、民法の「賃貸借」の部分に規定されています。
この民法の賃貸借は、賃貸人と賃借人が平等・対等であることを前提としていますが、実際の力関係は、賃貸人に有利なのが実際です。
そこで、借地借家法という「特別法」を定め、賃借人の保護を図ることにしました。
なかでも、契約の終了や更新拒否の場面で賃借人を守る制度が、「正当事由」という制度となります。

借地借家法
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

「正当事由」の判断基準

正当事由の判断基準は、条文を見るとよくわかります。
借地借家法第28条は、「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか」と記載して、主たる判断基準として、「当事者双方の建物の使用の必要性」を挙げています。
従って、まずは、それぞれの当事者の建物の必要性を検討することが必要になります。
それに加えて、
「建物の賃貸借に関する従前の経過」
「建物の利用状況」
「建物の現況」
「財産上の給付」(立退料等)
を総合的に考慮して、正当事由の有無を決定するとされています。
したがって、「立退料」は、賃貸人側の正当事由が無いときや弱い場合に、それらを補足するもの、というイメージになるかと思います。

「立退料」について

 立退料の相場?

しばしば、「立退料の相場ってあるの?」「立退料の相場はいくら?」という質問をされます。
これは、あると言えばあるという回答になりますし、無いと言えばないという回答になります。
建物の場合で言えば、建物の必要性のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況(老朽化の程度)などを踏まえ、賃貸人側に正当事由が認められる可能性があるか、ということを検討し、その検討を踏まえて立退料の要否と額を検討することになります。

立退きの流れ

最後に、建物の場合を想定し、大家さんの側にたって立退きを進める場合の流れを見てみましょう。

①契約類型の検討
定期建物賃貸借か、普通賃貸借かを検討することになります。
原則として、定期建物賃貸借の場合は、期間の途中でなければ「正当事由」は必要になりません。
②次に、立退きを依頼する理由があるかどうかを検討します。
立ち退きを求める理由が無い場合には、「正当事由」が無いことになりますので、基本的には賃借人が受諾しなければ、立退きは実現できない可能性が高いことになります。
他方、立退きを求める理由がある場合には、立退きの検討をしていくことになります。
③借主に債務不履行があるか。
借主に債務不履行があり、信頼関係が破壊されていると言える場合には、契約の解除を主張して行くことになります。この場合には、立退きの問題にはなりません。
借主に債務不履行が無かったり、信頼関係が破壊されているとまでは言えなかったりする場合には、契約の解除の主張は難しいことになります。
この場合には、「正当事由」があるかどうかを検討し、検討していく中で、立退料の支払いの要否・額などを検討していくことになります。

立退きとグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、宅地建物取引主任者試験(当時)に合格した弁護士、マンション管理士試験に合格した弁護士も在籍しています。
さらい、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰して、不動産取引の適正化や不動産問題の解決に尽力しています。

最後に

グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。
立退きだけでなく、不動産問題でお悩みの皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
弁護士のプロフィールはこちら