著作権に関して、二次的著作物とはどのようなものを言うのか、二次的著作物を作成するにあたっての原著作権者の承諾、二次的著作物における原著作権者の権利、三次的著作物などについて述べてみました。
著作権法における二次的著作物とはどのようなものをいうのか、二次的著作物における原著作権者の権利などについて、述べてみたいと思います。
1 二次的著作物とはどのようなものを言うのか。
二次的著作物とは、すでにある著作物(原著作物)をもとにして、新たに創作された著作物を言います。
もっと正確に言うと、著作権法2条1項11号では、二次的著作物を、「著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、または脚色し、映画化し、その他、翻案することにより創作した著作物をいう」としています。
これらの意味は下記のとおりです。
① 翻訳
原著作物の言語を別の言語に変換する行為を言います。例えば、小説の翻訳などです。
② 編曲
音楽や楽曲に対して、アレンジを加える行為などを言います。例えば、メロディやリズムを変更するなどです。
③ 変形
原著作物を、他の表現形式に変換することを指します。例えば、漫画のキャラクターをもとに、縫いぐるみを製造するなどです。
④ 脚色
原著作物を脚本にしたり、粉飾を加えたりすることです。例えば、小説を舞台で上映できるように、脚本にするなどです。
⑤ 映画化
これは文字どおり、原著作物を映画の形式に変換することです。
⑥ 翻案
原著作物の内面的な表現を維持しつつ、脚色、映画化などにより、外面的な表現を変えることと言われています。
また、二次的著作物も著作物ですから、著作物の要件である創作性を持っていることが必要です。創作性とは、作品に作者の個性、独自性があることと言いますが、創作性がなければ、これは二次的著作物ではなく、単に原著作物を複製したものに過ぎません。
2 原著作権者の承諾
二次的著作物を作るには、原著作権者の承諾を得なければなりません。
したがって、原著作権者の承諾を得ずに、二次的著作物を作り、これを使用した場合、原著作権者から差止め、損害賠償などの請求を受けることになります。
ただ、承諾を得ずに二次的著作物を作っても、創作性などの要件があれば、二次的著作権は成立するとされているので、第三者がこの二次的著作権を侵害すれば、二次的著作権者は、著作権を侵害されたとして第三者を訴えることができるとされています。
3 二次的著作物における原著作権者の権利
二次的著作物が成立しても、原著作権者の権利には影響はありません。したがって、二次的著作物を使用する第三者は、原著作権者と二次的著作権者の両名の同意を得なければなりませんし、二次的著作権者が(自分の)二次的著作物を利用する場合も原著作権者の同意を得なければなりません。
※ このように、原著作権者と二次的著作権者の両名の同意が必要なので、例えば、原著作権について、著作権の保護期間である70年が経過していても、二次的著作権について70年が経過していなければ、二次的著作権者の承諾を取らなければならないことになります。
ところで前述したように、二次的著作権が成立するためには創作性が必要ですから、二次的著作権者が著作権を持つのは、改変などによって新たに付与された創作的な部分であり、原著作物と共通し、実質が同じ部分には、二次的著作権が成立することはありません。この意味で、著作権法28条では、原著作物の著作権者は、二次的著作物の著作権者が有するのと同一の権利を有すると規定しています。
4 二次的著作物を利用して三次的著作物を作った場合
二次的著作物を利用して三次的著作物を作った場合は、二次的著作物が原著作物となります。この場合、最初の原著作物に依拠せず、二次的著作物にだけ依拠して三次的著作物を作った場合でも、三次的著作物から最初の原著作物の創作性ある表現が感得できるのであれば、最初の原著作物に依拠したと評価できるとされており、(最初の原著作権者の承諾を得ていないのであれば)三次的著作物による最初の原著作物に対する著作物侵害が成立するとされています。