景品表示法が定める指定告示について弁護士がわかりやすく解説

景品表示法は、類型化した不当表示を個別に規制しています(これを「指定告示」といいます)。

指定告示は、有利誤認表示や優良誤認表示と同様に、事業者にとっては重要なものですので、このコラムでは、指定告示について詳しく解説します。

1 指定告示とは何か?

1 指定告示とは何か?

景品表示法上、同法が定める不当表示の他に内閣総理大臣が指定する不当表示も規制の対象となります。

これは第5条第3号によるして告示であり、端的に「指定告示」と呼ばれています。

景品表示法が定める有利誤認表示や優良誤認表示とは異なる規制がありますので、事業者としては、この指定告示にも注意が必要です。

2 指定告示の要件

2 指定告示の要件

指定告示の要件についてひとつずつご紹介します。

(1)「商品又は役務の取引に関する事項」

「取引に関する事項」とは、商品や役務の内容及び取引条件の両方を含みます。

(2)「一般消費者に誤認されるおそれがある」

この要件は、「一概に著しく優良」、「著しく有利」といえない表示についても規制の対象とするものです。

これは、ある商品について、消費者が品質や価格について誤認しない場合であっても、保護することが景品表示法の趣旨に沿うものであるという考え方によります。

3 指定告示の種類

3 指定告示の種類

景品表示法上、指定告示として規定されているのは、以下のものになります。

  •  無果汁の清涼飲料水等についての表示
  •  商品の原産国に関する不当な表示
  •  消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  •  不動産のおとり広告に関する表示
  •  おとり広告に関する表示
  •  有料老人ホームに関する不当な表示

4 無果汁の清涼飲料水等についての表示

4 無果汁の清涼飲料水等についての表示

「3」でご紹介した指定告示の中で、一般の方にとって最も身近な「1」について、詳しくご紹介します。

(1) 対象商品

この表示の対象となる商品は、原材料に果汁や果肉が使用されていない容器または包装入りの清涼飲料水等(粉末飲料、アイスクリーム類等も含む)及び原材料に僅少な量の果樹等が使用されている容器または包装入りの清涼飲料水等(粉末飲料、アイスクリーム類等も含む)です。

(2) 無果汁清涼飲料水等について

無果汁清涼飲料水等については、下記の類型の表示であって、原材料に果汁等が使用されていない旨が明記されていないものが不当表示となります。

  • 容器または包装に記載されている果実の名称を用いた商品名等の表示
  • 容器または包装に掲載されている果実の絵、写真または図案の表示
  • 当該清涼飲料水等またはその容器もしくは包装が、果汁、果皮または果肉と同一または類似の色、かおりまたは味に着色、着香または味付けがされている場合のその表示

例えば、無果汁清涼飲料水等の容器にオレンジやリンゴなどの果物の絵を表示した場合は、「無果汁」など原材料に果汁等が使用されていないことを明記しなければ不当表示となる。

「無果汁」等の記載は、商標や商品名の表示(2箇所以上ある場合には、そのうちで最も目立つもの)と同一視野に入る場所に、背景の色と対照的な色で、かつ、14ポイントの活字以上の大きさの文字で見やすいように記載する必要があります。また、①~③の表示が内容物、容器等と外箱等の両方に記載されている場合には、「無果汁」等の記載は、その両方に必要となります。

(3) 僅少果汁清涼飲料水等について

(3) 僅少果汁清涼飲料水等について

僅少果汁清涼飲料水等については、イ①~③の表示であって、その清涼飲料水等の原材料に果汁等が使用されていない旨や使用されている果汁等の割合が明記されていないものが不当表示となります。

「僅少な量」とは、果実飲料の日本農林規格に定める果実ごとの糖用屈折計示度の基準等に対する割合が5%未満の量とされ、水を加えて飲用に供する清涼飲料水等にあたっては、標準の希釈倍数等により飲用に供する状態にした場合における糖用屈折計示度の基準に対する割合で5%未満の量とされています。

そのため、原材料として果汁が5%未満しか使われていないにもかかわらず、清涼飲料水等の容器に果汁の色を付けた場合には、使用されている果樹の割合を「果汁〇%」と明記しなければ不当表示となります。

(4) 具体例

無果汁告示違反の代表的な事例として、国分(株)に対する排除命令があります。

概要をご紹介します。

国分(株)は、平成元年4月頃から平成15年12月頃までの間、原材料に果汁及び果肉が使用されていない清涼飲料について、それぞれ以下の表示をすることにより、原材料に果汁または果肉が使用されているかのような印象を与える表示をしているにもかかわらず、清涼飲料の原材料に果汁または果肉が使用されていない旨を容器に明記していませんでした。

  • 容器に果実の名称を用いた商品名等を記載
  • 果実の図案を掲載
  • 内容物または容器に果実と類似の着香または着色

このような不当表示は、清涼飲料を販売する事業者であれば、意図せずとも行ってしまうリスクがありますので、注意が必要です。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

弁護士のプロフィールはこちら