増える建設業の倒産 限界を迎える前に弁護士に相談を

コロナ禍での延命政策の揺り戻しや資材高騰、人手不足を背景に、2023年の建設業の倒産件数は1,671件で、前年比+38.8%でした。債務超過となって営業を停止し、破産申立てをする場合には、建設業の特殊性も考慮した対応をする必要があり、弁護士の関与が必須です。

急増する建設業の倒産

急増する建設業の倒産

建設業 2023年の倒産件数は1,671件

株式会社帝国データバンクによる「建設業 倒産動向調査(2023年)」によると、2023年に発生した建設業の倒産件数は1,671件にのぼり、8年ぶりに1,600件を超えました。

前年比で+38.8%と急増しており、同社によると、この増加率は、2008年のリーマン・ショック期(3,446件で前年比+17.3%)を上回り、2000年以降では最も大きな増加率だそうです。

(出典:TDB Business View 「建設業」倒産動向調査2023年)

負債総額は1,856億7,800万円で、こちらも前年比+52.5%の大幅増となっています。

(出典:TDB Business View 「建設業」倒産動向調査2023年)

地域別の倒産件数

同じく株式会社帝国データバンクによる「建設業 倒産動向調査(2023年)」によると、2023年の建設業の倒産件数を地域別に見た場合、突出して目立つのが

前年比 210.0%増の「北海道」(62件)です。

同社の分析によれば、これは、資材価格の上昇で戸建てを中心に販売価格が高騰した結果、建売住宅の在庫が滞留したうえに、人手不足もあって、小規模業者を中心に倒産が急増したことによるものだそうです。

また、「九州」は 前年比50.5%増の158 件となり、過去10年で最多となりました。

こちらも同社の分析によると、福岡市中心部の大型再開発プロジェクトや熊本の半導体関連投資など、需要が活発化しているがゆえに、仕入れや人手確保に伴うキャッシュアウトが先行し、資金繰りがショートするケースが多かったようです。

(出典:TDB Business View 「建設業」倒産動向調査2023年)

建設業の倒産が急増した要因

建設業の倒産が急増した要因

2023年にこれだけ建設業の倒産が急増した要因としては、

■コロナ禍でのゼロゼロ融資など、政策的に抑制されていた倒産の揺り戻し

■資材の高騰や人手不足などに伴う建設コスト全体の上昇

があると言われています。

特に、建築コスト全体の上昇は2023年に限られた問題ではありません。

建設業では、元請け・下請け・孫請けなど契約関係が多層構造となることも多いのですが、請負単価が上がらない中で資材の価格が高騰すれば、その皺寄せは交渉力の弱い末端の業者に行きがちです。

下請けや孫請けを担う中小規模の業者数が倒産により減ってしまうと、現在進行中の現場がストップしてしまったり、新規の受注にも影響を及ぼしたりといった悪影響が生じます。

また、人手不足の問題は工期の延長を引き起こしますし、ひどい場合は、需要はあるのに新規の受注を思うように受けられなくなるケースもあります。

さらに、建設業界では、残業時間の上限規制(原則として月45時間、年360時間以内)が2024年4月から適用されることになっており、人手不足にさらなる拍車がかかるのではないかと懸念されています(いわゆる「2024年問題」)。

業界全体の取り組みとして、適切な価格転嫁や工期の適正化が進まなければ、特に中小規模の業者を中心に、今後も倒産件数が増加していくことになるかもしれません。

破産申立てを考えている建設業の方へ

破産申立てを考えている建設業の方へ

建設業破産の特殊性

債務超過に陥り、これ以上業績の回復も見込めないという場合は、苦渋の決断として、会社を倒産させる、すなわち、会社の破産申立てを行うことも考えなければなりません。

その際、注意しなければならないのは、業態が建設業であるがゆえの特殊性です。

建設業には、

■自社の従業員だけでなく、多数の業務委託先や、下請け・孫請けが存在する場合がある

■作業途中の仕掛かり現場がある

■特殊な建設機械や多数の資材、足場材料などがある

■処理しなければならない産業廃棄物を抱えている

といった特殊性があります。

破産を申し立てるには、これらの処理(契約関係の解消、現場の引き継ぎ、在庫資材の処分など)をどうするのか、慎重に進めていかなければなりません。

処理を誤れば、破産申立ての前後で、取引先や注文者などの関係者にさらなる迷惑をかけることとなってしまいます。

限界を迎える前に弁護士に相談を

これまで継続してきた事業を閉じる決断をするのは、大変勇気のいることと思います。

しかし、明らかに債務超過の状態にあり、業績が回復する見込みもないのに、無理をしてギリギリまで経営を続けてしまうと、いずれ会社資金が枯渇してしまいます。

破産申立てをするのは、依頼する弁護士費用の他に、裁判所に管財予納金を納める必要もあり、相応の費用がかかります。

会社財産が完全に底をついてしまった後では、これらの費用を工面することができず、破産申立てすることさえできない・・・という事態にもなりかねません。

資金繰りや経営の行き詰まりに悩んでいる建設業の方は、限界を迎える前に、是非一度、弁護士に相談して下さい。

早めに相談して悪いということはありません。

また、その際は、建設業の特殊性を理解し、同種の破産申立てに精通している弁護士を選ぶようにしましょう。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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