こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

「カルテル」という言葉をご存じでしょうか。

「カルテル」の例としては、競争関係にある事業者間で、足並みをそろえて価格の引き上げを行うような行為が挙げられます。

事業者にとっては、足並みをそろえて値上げを行えるのであれば、競争をする必要がなくなりますので、利益になるといえます。

では、なぜ「カルテル」は、独占禁止法で禁止されているのでしょうか。

そこで、この記事では、「カルテル」がどういった場合に成立するかや、「カルテル」が禁止される理由などを説明したのち、「カルテル」について企業が知っておくべきリスクをわかりやすく解説していきます。

「カルテル」とは

「カルテル」の種類

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(いわゆる「独占禁止法」)は、「不当な取引制限」を禁止しています(同法第2条6項、第3条)。

「カルテル」は、「不当な取引制限」の一態様になります。

「カルテル」は、厳密に分類すると「ハードコアカルテル」と「非ハードコアカルテル」に分けられます。

価格を共同して引き上げるという「価格カルテル」は、「ハードコアカルテル」の典型例といえ、他には、「数量制限カルテル」や「取引先制限カルテル」、「市場分割カルテル」、「入札談合」などがあります。

他方で、「非ハードコアカルテル」とは、上記以外のカルテルをいい、例えば、共同研究や環境保全を目的とする合意などが挙げられます。

「カルテル」が成立する条件

カルテルが成立する要件は、以下の5つです。

① 「事業者」が「他の事業者」と
② 「共同して」
③ 「相互に拘束して」、「共同遂行」
④ 「一定の取引分野における競争を制限する」こと
⑤ 「公共の利益に反する」こと

今回は、上記の要件の中で、問題となりやすい②と③について解説していきます。

②「共同して」とは

「共同して」とは、事業者相互間に、「意思の連絡」が存在することを意味します。

典型例としては、価格の値上げ行為について、契約や協定がある場合など、明示的な意思連絡がある場合です。

もっとも、判例上、明示的な意思連絡までは必要条件とされておらず、他の事業者と相互に共同行為を認識して、暗黙のうちに認容すること(「黙示の合意」)で足りるとされています。

「意思の連絡」が認められるかの判断については、事業者間の直接の連絡の有無や、事前交渉の有無が重視されます。

なお、「不当な取引制限」(カルテルなど)は、意思の連絡がなされた時、すなわち、合意が成立した時に成立するとされています。

合意の内容を着手したか・実施したかどうかや、実施時期が到来したかどうかなどは、問題となりませんので、注意が必要です。

③「相互拘束」、「共同遂行」とは

「相互拘束」とは、「拘束の共通性」と、「拘束の相互性」が必要とされています。

「拘束の共通性」とは、価格の値上げ行為など、共同行為の目的が共通していることをいうと考えられています。

また、「拘束の相互性」とは、明示または黙示の合意を遵守し合う関係が認められることをいうと考えられています。

価格カルテルの例でいえば、事業者相互間で、価格の引き上げ行為について、明示もしくは黙示的に、値上げを行うという合意を遵守し合う関係が認められれば、当然、価格の値上げという目的を共通にしているものと認められることになります。

「カルテル」が禁止される理由

そもそも、「カルテル」の目的は、本来であれば競合関係にある事業者間において、相互に競争を避けて商品やサービスの価格を高く維持し、不当に経済的利益を得ようとするところにあります。

市場において健全な競争原理が働いていれば、各々の事業者は顧客を得るために企業努力をして切磋琢磨していき、他方で、企業努力に敗れた事業者は、消費者から選ばれなくなることで、自然に淘汰されていくことになるでしょう。

上記のとおり、「カルテル」は、健全な競争原理を破壊するものであり、独占禁止法の究極目的である「一般消費者の利益の確保と国民経済の民主的で健全な発達の促進」に反するといえるため、禁止されるのです。

「カルテル」だと認められた場合のリスクとは

上記のような検討の結果、「カルテル」にあたると判断された場合には、公正取引委員会から次のような処分を受ける可能性があります。

① 「排除措置命令」
② 「課徴金」

①「排除措置命令」とは

「排除措置命令」は、公正取引委員会が命じるものであり、たとえば、(ⅰ)違反行為やその実行手段の差し止め、(ⅱ)違反行為を止めたことの確認、(ⅲ)取引先等への周知徹底、(ⅳ)再発予防策、公正取引委員会への報告などが挙げられます。

公正取引委員会は、価格カルテルの場合、値上げ前の水準に戻す価格引き下げを命じるのではなく、代わりに、取引先との価格の再交渉を命じ、当事者間の自主的な価格形成に期待するスタンスを取っているようです。

②「課徴金」とは

独占禁止法違反行為があった場合、公正取引委員会は、違反事業者に対し、課徴金を国庫に納付することを命じなければならないとされています。

なお、課徴金には、減免制度(リニエンシー制度)というものがあります。

これは、公正取引委員会の調査開始前に、違反事実の報告等を最初に行った事業者について、課徴金を全額免除としたり、次順で報告等を行った事業者の課徴金を減額すると言った制度です。

減免制度の目的は、違反行為の抑止と発見にあります。

このような制度があることにより、カルテル破りの誘因を大きくし、ひいてはカルテルの成立抑止が図られることになります。

まとめ

「不当な取引制限」の一例である「カルテル」について解説していきました。

今般、どの業界においても値上げがなされることが多いご時世となっております。

「カルテル」だと認定された場合には、排除措置命令や課徴金の納付を命じられるおそれがありますので、「カルテル」にあたる行為を行わないことが重要です。

また、仮に「カルテル」が形成された場合でも、減免制度がありますので、すぐに公正取引委員会に報告等をすることが大事だといえます。

独占禁止法は専門的な知識が必要な分野ですので、お困りの際は、独占禁止法に強い弁護士に相談することをお勧めいたします。


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弁護士 渡邉 千晃

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