労働者の派遣事業については、労働者派遣法が規制を行っています。この法律に違反しないために注意すべきポイントがありますので、解説いたします。

労働者派遣法が規制する労働者派遣とは

労働者派遣法において、労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」と定義づけがされております。そのため、このような労働者派遣を行う場合には、労働者派遣法に違反しないかについて注意が必要です。

労働者派遣事業の許可制

労働者派遣法は、労働者派遣を一定の目的のために反復して行うこと(労働者派遣事業と言います)について、厚生労働大臣の許可が必要であると定めています。

グループ企業への派遣の規制

労働者派遣法によって、派遣元事業主は、自らの経営を実質的に支配することの可能な関係にある者その他特殊の関係にある一定の者(関係派遣先と言います)に労働者派遣をするときは、関係派遣先の派遣割合(派遣就業に係る総労働時間ベースで計算します)が8割以下になるようにしなければなりません。

労働者派遣ができない業種

港湾・建設・警備などの業種は、労働者派遣事業を行ってはなりません。

派遣可能期間

派遣可能期間は、原則として3年とされています。派遣先は、事業所ごとにこの期間を守らなければなりません。例えば、○○会社△△支店では、3年以上派遣就業をすることはできないということです。ただし、この期間は、期間満了の1か月前までに当該事業所の過半数組織労働組合または過半数代表者の意見を聴取して同期間を3年に限り延長することができ、延長期間が満了するときも同様の延長をすることができます。

他方、派遣元事業主は、派遣先の事業所における組織単位(課に相当する)ごとの業務について、3年を超えて同一労働者に係る労働者派遣を行ってはなりません。また、派遣先は、派遣可能期間が延長された場合において、派遣先の事業所における組織単位(課に相当する)ごとの業務について、3年を超えて同一労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはなりません。

そのため、例えば、○○会社△△支店では、派遣可能期間が3年以上に延長されたとしても、ある派遣労働者が××課で3年働いた場合は、別の課に移る必要があります。

労働者派遣契約

労働者派遣をする事業主は、労働者派遣の役務の提供を受ける者との間で労働者派遣契約を締結します。

契約では、

労働者派遣の役務の提供の内容

派遣先の事業所名と所在地・就業の場所・組織単位

指揮命令者

派遣の期間

就業日

就業時間・休憩時間

安全衛生

苦情処理に関する事項

などを定め、労働者派遣の人数をこれらの事項の違いに応じて定めなければなりません。

また、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約を締結するにあたって、派遣労働者の特定を目的とする行為をしないように努めなければなりません。特定を目的とする行為とは、例えば、履歴書の提出、事前面接、若年者を希望すること等が挙げられます。

そして、労働者派遣の役務の提供を受ける者は、派遣労働者の国籍・信条・性別・社会的身分、派遣労働者が労働組合の正当な行為をしたこと等を理由に、労働者派遣契約を解除することを禁じられています。

雇用安定措置

派遣元事業主は、派遣先の同一の組織単位の業務について継続して1年以上の期間労働者派遣に従事する見込みのある有期雇用派遣労働者であって、当該労働者派遣の終了後も継続して就業することを希望しているもの(特定有期雇用派遣労働者)、その他雇用の安定を図る必要が高いものに対し、以下のいずれかの「雇用安定措置」を講じるように努めなる必要があります。

・派遣先に対し直接雇用を求める措置

・派遣労働者として就業させることができるように、当該労働者の能力、経験等に照らして「合理的な」条件での就業の機会を提供する措置

・派遣労働者以外の労働者として無期雇用できるようにするために雇用の機会を確保し提供する措置

・新たな就業の機会を提供するまでの間の有給の教育訓練

また、派遣元事業主は、同一の組織単位における3年間の派遣可能期間が完了する見込みの派遣労働者については、雇用安定措置を取る必要があります。

派遣労働者の均衡・均等待遇義務

派遣元事業主は、派遣労働者の基本給、賞与その他待遇の各々について、派遣先に雇用される通常の労働者の待遇と比較して、派遣労働者および通常の労働者の職務内容、職務内容および配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質および待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとされています。

また、派遣元事業主は、職務内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であって、労働者派遣契約及び派遣先における慣行その他の事情からみて、派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容および配置が派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における通常の労働者の職務内容および配置の変更範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇の各々について、通常の労働者の待遇と比較して不利なものとしてはなりません。

以上が原則ですが、派遣元での労使協定による適正待遇方式を選択することも可能です。派遣元事業主が、派遣元での労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者と一定の要件を充たす書面による労使協定を結ぶことで、派遣先との均衡・均等を考慮せずに、一定水準を充たす待遇を行うという選択をすることもできます。

まとめ

以上、労働者派遣法に違反しないためのポイントを、簡単ではありますが解説させて頂きました。注意すべきポイントが様々ありますので、ご参考にして頂けますと幸いです。

■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 村本 拓哉

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