こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

先日、即席麺で有名な「日清食品」が、スーパーなどの小売店向けのカップ麺5品目について、小売価格を引き上げさせたという疑いがあることから、公正取引委員会が警告をする方針を固めたとのニュースがありました。

販売事業者が小売店に対して、販売価格を引き上げさせる(販売価格を指示する)行為は、独占禁止法上の「再販売価格の拘束」(法2条9項第4号)として、規制を受けることになります。

この「再販売価格の拘束」を行った場合には、公正取引委員会から、違反状態を是正するための排除措置命令や、課徴金の納付命令を受ける可能性があります。

そこで、この記事では、日清食品の例を基に「再販売価格の拘束」がどういった場合に成立するかをわかりやすく解説していきます。

「再販売価格の拘束」とは

概要

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(いわゆる「独占禁止法」)は、事業者による「再販売価格の拘束」を禁止しています(同法第2条9項4)。

「再販売価格の拘束」とは、簡単にいうと、販売業者A社が、自己の商品を購入する卸売業者B社に対して、販売価格を指示し、その価格で販売させる行為をいいます。

また、販売事業者A社が、卸売事業者B社から購入する小売業者C社の販売価格を指示し、卸売事業者B社をして、小売業者C社に指示価格で販売させる行為も、これに含まれます。

「拘束」の意味

「再販売価格の拘束」における「拘束」が認められるためには、何らかの人為的手段により、取引相手の事業活動を制限することについて、その実効性が確保されていることが必要とされています。

例えば、取引当事者間で販売価格を合意することはもちろん、取引の相手方において、販売価格の指示に従わない場合に、取引の停止などの経済的な不利益を課すことによって、相手方が従わざるを得ない場合などは、「拘束」といえます。

もっとも、メーカーによっては、希望小売価格や標準小売価格を設定することも多いかと思いますが、これも「再販売価格の拘束」にあたってしまうのでしょうか。

結論としては、希望小売価格や標準小売価格が定められている場合であっても、取引の相手方において、実売価格を自由に決定できる場合には、「拘束」にあたらないと考えられています。

再販売価格の拘束は、なぜ不当なのか?

再販売価格を拘束することは、なぜ不当とされるのでしょうか。

それは、端的に言えば、再販行為における販売価格を拘束することで、その商品の価格競争が回避されてしまうからです。

すなわち、メーカーによる販売価格の拘束により、卸売業者間または小売業者間の価格競争が減少・消滅してしまうおそれがあるということから、再販売価格の拘束は不当と考えられているのです。

「日清食品」による再販売価格の拘束の疑いについて

ニュースによれば、日清食品は、カップ麺の主力商品である「カップヌードル」やそのシリーズの「カレー」及び「シーフードヌードル」のほか、「どん兵衛きつね」、「日清焼きそばU.F.O」の5品について、全国のスーパーやドラッグストアなどの小売店に対して、値上げ価格を指定して、販売させた疑いが持たれているとのことです。

日清食品による当該販売価格の指定により、小売店などにおいてカップヌードル等の価格競争が行われなくなるおそれがあることから、今回、公正取引委員会から調査を受けることになったと思われます。

調査の中では、小売業者が日清食品からの販売価格の指示に従わなかった場合に、何らかの経済的不利益を課されるおそれがあったかどうかなどが問題になると思われます。

まとめ

「日清食品」において独禁法違反の疑いがあるというニュースを基に、独禁法上の問題とされる「再販売価格の拘束」について解説していきました。

本件で、仮に公取委が独禁法違反の事実を認定した場合には、日清食品に対して、再発防止策を求める排除措置命令や課徴金の納付命令などの違反行為是正処置がとられることになるかと思います。

物価高が叫ばれる現代社会において、販売価格の競争が適正に行われることは、一層重要度を増すといえるでしょう。

「再販売価格の拘束」にあたるかについて検討する際には、独占禁止法の専門的な知識が必要となりますので、お困りの際は、独占禁止法に強い弁護士に相談することをお勧めいたします。

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