昨今、No.1広告を目にする機会は増えてきています。

No.1広告は、一般消費者を誘引する力がありますが、景品表示法上違法とされてしまうリスクもあります。

このコラムでは、No.1広告について、違法とされた事例をご紹介しながら、事業者が注意すべき点を解説します。

1 No.1広告とは何か?

世に出ている商品やサービスに関する広告の中には、「業界No.1」、「●●ランキング第1位」といった広告が見られます。

ある分野または範囲において一番であることを示すことにより、その商品またはサービスの品質が良いことを強調し、一般消費者の購買を促す効果があります。

ただ、一般消費者の目を引き、購買意欲を促進する効果が強い反面、違法に行われた場合、一般消費者の誤認を生じるおそれもあります。

景品表示法上は、不当表示である優良誤認表示や有利誤認表示にあたり得る可能性があります。

なお、No.1広告を適法に行うための要件や事業者が気をつけるべきポイントについては、以下のページをご覧ください。

「No.1広告とは?適法に行うにはどうすれば良い? 弁護士がわかりやすく解説」

2 No.1広告が問題となった事例

以下では、実際にNo.1広告が景品表示法上問題となった事例をご紹介します。

(1)株式会社PMKメディカルラボに対する措置命令

株式会社PMKメディカルラボは、同社が運営する店舗において供給する豊胸施術に係る役務及び瘦身施術に係る役務のふたつを一般消費者に提供するにあたり、自社のウェブサイトにおいて、「あの楽天リサーチで2冠達成、バスト豊胸&瘦身部門で第1位獲得!」、「バストアップ第1位 施術満足度」などと表示することにより、あたかも、楽天インサイトが実施したPMKメディカルラボが提供する本件2役務及び他の事業者が提供する本件2役務と同種又は類似の役務を利用した者に対する施術満足度調査の結果において、同社が提供する本件2役務に関する施術満足度の順位が第1位であるかのように示す表示を行った。

しかし、実際には、本件2役務に関する楽天インサイトが実施した調査は、PMKメディカルラボが提供する本件2役務及び他の事業者が提供する本件2役務と同種又は類似の役務を利用した者を対象とする調査ではなく、また、当該調査においてPMKメディカルラボが提供する本件2役務に関する施術満足度の順位は第1位ではなかった。

この事例では、広告に引用された調査自体がそもそも客観的なものであるとはいえませんでした。広告で表示された内容とは異なる事項及び者を対象とするものであったためです。

また、それに加え、施術満足度の順位が第1位でなかったにもかかわらず、そうであるかのように表示したことも調査の結果を正確かつ適正に引用しているとはいえませんでした。

(2)タマホーム株式会社に対する排除命令

タマホーム株式会社は、注文住宅の建築請負の役務について、新聞折込チラシ及びテレビコマーシャルにおいて、「注文住宅着工棟数2年連続日本一」、「2004年・2005年度注文住宅地域ビルダーランキング(着工)第1位(株)住宅産業研究所調べ」などと表示し、あらかも、平成16年度及び平成17年度の2年間において連続してタマホームの注文住宅着工棟数に関する順位が日本国内で第1位であるかのように表示していました。

しかし、実際には、平成16年度及び平成17年度におけるタマホームの注文住宅着工畝数に関する順位は、営業地域が限定された住宅建築業者の中で第1位であるにすぎず、全国を営業地域とする住宅建築業者を含めた我が国に所在するすべての住宅建築業者の中で第1であるものではありませんでした。

この事例では、実施された調査の対象範囲が問題とされました。No.1広告を行う場合、No.1広告の対象となる商品等について、広告等の表示物から一般消費者が認識する地理的範囲と実際の調査の対象である地理的範囲との間に乖離があり、一般消費者が認識する地理的範囲においてはNo.1の事実がなければ、その広告は景品表示法上問題となってしまいます。

(3)学校法人西日本松永学園に対する排除命令

学校法人西日本松永学園は、福岡お茶の水医療秘書福祉専門学校の生徒募集に関し、一般消費者に配布したパンフレット等において、平成16年度の社会福祉士試験に合格した者の出身短期大学、専修学校及び各種学校別に見た合格者数による順位について、あたかも、福岡お茶の水医療秘書福祉専門学校が、全国に所在する出身福祉系短大等中第2位、また、近畿地方以西の西日本地区に所在する出身福祉系短大等中第1位であるかのように表示していた。

しかし、実際には、全国に所在する出身福祉系短大等中第8位、また、近畿地方以西の西日本地区に所在する出身福祉系短大等中第3位でした。

この事例では、調査結果を正確かつ適正に引用していないことが問題となりました。

No.1広告の根拠となる調査が客観的であり適切であったとしても、その調査結果を正確かつ適正に引用しなければ、景品表示法上違法となってしまいます。

この事例では、調査結果をそのまま引用せず、調査結果と異なる表示をしたことが問題とされました。

3 まとめ

以上見てきたように、No.1広告を適法に行うためには、広告の前提となる調査を行う必要がありますが、その調査自体も適切になされていなければなりません。

調査を行う際は、調査の期間、対象、内容などについて、表示する広告と整合性がとれているかどうかなどをよく検討することが大切です。

No.1広告は、一般消費者を誘引するための有効な手段ではありますが、やり方を間違えると、景品表示法上の規制・行政処分等を受けることになってしまいます。

No.1広告が適法かどうかについては、法律に関する専門的な知識や判断が必要になりますので、お困りの場合は、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

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