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M&Aとは、合併と買収を意味します。会社が別の会社(実際には株式)を買い取る際に、リスクを回避するために法務デューデリジェンス(DD)を実施します。このページでは、埼玉県で30年以上、中小企業を中心とする企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、M&Aや法務デューデリジェンスについて、ポイントを絞って分かりやすく解説します。
そもそも、M&Aとはどのようなものですか?
M&Aとは
M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略です。
「合併と買収」を意味します。
具体的には、会社や事業を売買することを指します。
M&Aの主な形態は?
M&Aの主な形態は、以下のとおりです。
・会社全体の売却
・株式譲渡
・合併
・株式交換
・株式移転
・事業の一部の売却
・事業譲渡
・新設分割
・吸収分割
これらの手続については、会社法の規定に基づき実施することが不可欠です。
M&Aの目的とは?
M&Aの目的は多様ですが、主なものは、以下のとおりです。
・事業承継対策
・後継者不足対策
・事業の選択と集中
・赤字/債務超過企業の売却
M&Aでは、売り手は、会社・事業の売却代金を得て経営から退き、買い手は、株式や事業を取得して経営を引き継ぎます。
近年、日本国内の企業でもM&Aが積極的に活用されており、特に中小企業では事業承継を目的としたM&Aの割合が高くなっています。
法務デューデリジェンス(DD)とはどのようなものですか?
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法務デューデリジェンスは、買い手の企業が、購入する会社(株式)のリスクを購入前に評価するために行われます。良い買い物と考えて安易にM&Aを実施したところ、蓋を開けてみたら、簿外の負債があった、取引先に問題があった、目論見が外れた等で評価を見誤ってしまうケースがありますから、きちんとリスクを事前に評価するために法務デューデリジェンスを実施することは非常に重要です。
法務デューデリジェンスは、M&Aにおいて買収対象企業の法的リスクを包括的に評価し、取引の適切性を確保するために行われます。弁護士の視点から見た主な目的は以下の通りです。
リスク評価と軽減
・法的リスクの特定を特定します。
具体的には、対象企業の契約関係、知的財産権、労働環境、訴訟、法令遵守状況などを調査し、潜在的な法的問題を洗い出します。
・事業継続性を調査します。
法的観点から事業が中断されるリスクや競争力の源泉が損なわれる恐れがないかを確認します。
・企業価値への影響分析をします。
特定されたリスクが対象企業の価値をどの程度減少させる可能性があるかを評価します。
取引の適正性確保
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・M&A阻害要因の確認をします。
法制度や法規制がM&Aの実行を妨げる要因とならないかを確認します。
・法的スキームの検証をします。
株式譲渡、合併、会社分割などの想定されるM&Aスキームが法的に実行可能かを検証します。
・許認可の承継確認をします。
当然、対象企業の事業に必要な許認可が適切に承継できるかを確認します。
交渉と意思決定支援
・買収価格の適正性評価をします。
法的リスクを踏まえて、提示された買収価格の妥当性を判断します。
・契約条件の交渉材料を探します。
発見されたリスクに基づいて、買収契約の条件交渉を有利に進めるための材料を提供します。
・買収判断の根拠提供をします。
最終的な買収の可否を判断するための重要な情報を提供します。聴き取り調査なども実施し、判断材料とします。
このように、法務デューデリジェンスを通じて、弁護士は買い手企業に対して法的リスクを明確に示し、M&Aの成功確率を高めるための重要な役割を果たします。
これにより、買収後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな統合プロセスを支援することができます。
弁護士による法務デューデリジェンスの流れとは?
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最後に、デューデリジェンスの流れを弁護士の視点から時系列に従って解説します。
①チーム編成と準備
まず、弁護士を中心としたデューデリジェンスチームを編成します。
このチームには、必要に応じて税理士や公認会計士などの専門家も含まれます。
チーム編成後、秘密保持契約を締結し、調査方針とスケジュールを決定します。
②情報収集と分析
・資料請求と確認
売り手企業に対して必要な資料を請求し、提供された情報を詳細に確認します。
この段階で、債務、株式、資産、契約、労働環境、訴訟、許認可など、幅広い法務関連情報を収集します。
・インタビューの実施
売り手企業の関係者にインタビューを行い、書面では把握しきれない情報を収集します。
③リスク評価
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収集した情報をもとに、法的リスクの評価を行います。これには一般に以下の項目が含まれます。
・訴訟・紛争の有無と影響
・資産・負債の法的状況
・契約関係の問題点
・労働環境の法令遵守状況
・許認可の有効性
④報告書作成
調査結果をまとめたデューデリジェンス・レポートを作成します。
このレポートには、発見されたリスクとその影響、対処方法の提案などが含まれます。
⑤結果の検討とアドバイス
報告書をもとに、M&A実施の可否、買収価格の妥当性、リスク軽減策などについて、買い手企業にアドバイスを提供します。
⑥交渉サポート
必要に応じて、発見されたリスクに基づいて売り手との価格交渉や契約条件の調整をサポートします。
以上の流れを通じて、弁護士は法的リスクを適切に評価し、M&Aの成功に向けて重要な役割を果たします。
早期からの弁護士の関与が、リスクの見落としを防ぎ、買い手企業の利益を守ることにつながります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書の添削も特定の弁護士が行います。企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。
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