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経営者が労働問題の発生に備え、あらかじめできる対策にはどのようなものがあるのでしょうか。残業代請求、問題のある従業員の解雇、育児・介護を行う従業員への配慮、ハラスメントの予防、働き方改革への対応等の課題が想定されますが、経営者が紛争の予防策をあらかじめ講じることは可能ですので、今回はこれらに関する解説を行い、弁護士が提供できるサポートにはどのようなものがあるのかを説明いたします。
就業規則・雇用契約書の整備
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法律に準拠しつつ、会社の実情に合った就業規則や雇用契約書を作成・改訂することが必要です。
入社時に気を付けるべき具体例としては、試用期間中に従業員としての適格性に問題がある場合には、試用期間満了後に契約が終了するような定めを設けておく等が想定されます。
また、入社した後の労働条件として契約書に定めておくべき具体例としては、残業の発生があらかじめ見込まれる場合は、変形労働時間制や固定残業代の定めを設けておくこと等が想定されます。
そして、就業規則においては、従業員が問題行動を起こした際に、懲戒処分を行い、問題行動を戒めることができるように、従業員が守るべきルール及びルール違反の場合に経営者側が処分を行うことができるようにあらかじめ定めておく必要があります。
特に、ハラスメントは予防すべき問題ですので、雇用契約書や就業規則において、ハラスメントを行ってはいけないことや、発覚した場合の処分の内容、ハラスメントを予防するための体制等を定めておくことが望ましいです。
その他にも、子育てや介護をする従業員のために、育児・介護休業法による労働条件の規制が存在しますので、自社の雇用契約書や就業規則が、法律に適合しているか等を検討することも、課題として想定されます。
問題が起きにくい労働条件の設定することが重要で、弁護士はこうした労働条件の定め方を提案することができます。
労務トラブルの予防
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未払い残業代、解雇、ハラスメントなどのリスクを事前にチェックします。
残業代について
労働時間の管理が適切になされているか、不要な残業時間の発生を防ぐための労務管理が適切になされているか等をチェックします。
労働時間を把握して長時間勤務をしている従業員に対しては、労働時間が長時間化していることを説明し、従業員の労働内容について聞き取りを行い、労働時間の短縮に向けた解決策を提案・助言できるようにする必要があります。
裁判においては、従業員は会社に滞在していたが無駄なことをしていたので、その分の労働時間はカウントすべきではないというような主張は通用しませんので、無駄な残業をさせないための指導の体制が整えるということが重要であり、弁護士は体制の構築について助言を行うことができます。
解雇について
労働者の勤務態度に問題があることを記録していなければ、裁判で解雇の有効性が認められることは非常に少ないですので、従業員の行動を記録するような体制が構築できているか等をチェックします。
また、行動を記録するのみならず、問題行動が発覚した際に、速やかに指導を行い、改善を促したかということも、解雇の有効性を裁判所が判断する際にはチェックされますので、従業員に対する指導がうまく行えているかについて、確認をする必要があります。
弁護士は、本当に問題のある従業員を将来において解雇するために、以上のような行動の記録、及び、問題に対する指導を、経営者が適切に行えているのかを、法的にチェックすることができ、また、助言を行うことができます。
ハラスメントについて
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経営者がハラスメントを予防・対処するための措置として、
ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
相談窓口の設置
相談に対する適切な対応
事実関係の迅速かつ正確な確認
被害者に対する適正な配慮の措置の実施
行為者に対する適正な措置の実施
再発防止措置の実施
等がありますので、弁護士はこれらに関する助言を行います。
弁護士において、パワーハラスメント・セクシャルハラスメント防止の講義や指導を行うことも可能です。
労働基準法や労働契約法に対応するアドバイス
労働基準法やその施行規則の改正により、時間外労働の上限の設定、並びに、雇用契約の締結、及び、有期雇用契約の更新における、法律の定める方法による労働条件の明示等の規制が設けられていますので、経営者はこれらの規制に対応する必要があり、弁護士はこれらに関する助言を行うことができます。
労働契約法に関しては、有期雇用契約の終了を規制する定め(雇止めの規制)、及び、有期雇用契約者の無期雇用契約への転換のルール等、経営者が遵守すべきルールがありますので、弁護士において助言を行います。
最後に
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以上の通りご説明をさせて頂きましたが、弁護士は、労働問題の解決だけでなく、予防的な視点でのアドバイスも提供でき、実際に労働問題が発生して裁判に発展しますと、残業代や損害賠償の支払いを命じられたり、解雇の有効性が認められないというリスクがありますので、あらかじめ予防策を講じておくことが重要です。
そのためにも、経営者の方には、お早めに労働問題に関するご検討及びご相談をして頂くことが大切であると考えておりますので、ご参考にして頂けますと幸いです。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、玉県ではトップクラスの法律事務所です。 企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書の添削も特定の弁護士が行います。まずは、一度お気軽にご相談ください。
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