問題社員への対応は会社が直面しやすい問題のひとつです。

会社の環境や被害者の利益と問題社員の権利のバランスをとることが求めれます。

このコラムでは、問題社員対応について会社が注意するべきポイントなどを具体例を交えて解説します。

1 問題社員対応の難しさ

(1)問題社員とは?

企業における「問題社員」とは、勤務態度や業務能力、ハラスメント行為など、職場の秩序や生産性に悪影響を及ぼす従業員を指します。このような社員への適切な対応は、企業の健全な運営と職場環境の維持に不可欠です。

ただ、問題社員がいるからといって、直ちに処分などをすると、その社員との関係で法的な紛争が生じてしまう可能性があります。

そのため、問題社員への対応には注意が必要です。

(2)問題社員の特定と分類

問題社員は主に以下の3つのタイプに分類されます:

能力・成績不良型:業務の成果が著しく低く、ミスが多い、または必要な知識やスキルの習得に遅れが見られる従業員。

勤務態度・規律違反型:上司の指示に従わない、業務を放棄する、社内ルールを守らない、遅刻や無断欠勤が多いなどの行動を取る従業員。

ハラスメント・違法行為型:セクハラやパワハラを繰り返す、社外での犯罪行為や社内での横領など、企業の信用を損なう行為を行う従業員。

2 問題社員ごとの対応

(1)私生活上の非違行為を行った従業員の解雇

従業員が私生活上で非違行為(犯罪などの非難されるべき行為)を行ったからといってそのことのみで直ちにその従業員を解雇するべきではありません。

解雇が無効とされてしまう可能性があるためです。

従業員が犯罪にあたる行為を行った場合、解雇の有効性を判断するポイントは主に次のとおりです。

ア 犯罪の内容

問題となっている罪名のみならず、発生した事実の具体的な内容が重要です。

傷害事案であれば、傷害の内容や経緯、被害者に発生した負傷の内容等が問題となります。

飲酒運転の事案であれば、飲酒の経緯や飲酒量、発生した結果等が問題となります。

これらが重大であれば、解雇は有効になりやすいです。

イ 刑事処分の内容

犯罪を起こしたとしても、起訴有訴などであれば、解雇は無効になりやすいです。

逆に、起訴され有罪判決を受ければ解雇は有効になりやすくなります。

ウ 犯罪と従業員の職務の関係

従業員が起こした犯罪と従業員の職務の関係が強ければ、解雇は有効になりやすいです。

例えば、車両を運転する業務である従業員が飲酒運転や交通事故を起こした場合は、解雇が有効になりやすくなるでしょう。

(2)セクハラを行う従業員への対応

ア 具体例(東京地判平成21年4月24日)

ある会社の社員旅行において、男性社員が複数名の女性社員に対し、「体のラインを強調するような私服を着たらいいのに」、「しかし、おっぱい大きいな」、「女として乳が大きいのはええことやろ」等と繰り返し発言をしました。それ以外にもこの男性従業員は、日常的に女性社員に対し、体型に関する発言をしたり、手を握る・肩に手をまわすなどの行為をしていました。

これを受けて、会社は、この男性社員を懲戒解雇としましたが、裁判所は、懲戒解雇は重すぎるとして無効と判断しました。

イ 検討

この事例では、問題となる男性社員は日常的に女性社員に対して性的な言動を行っており、その態様も軽いものとはいえないことから、懲戒解雇は妥当であるという見解もあるかもしれません。

しかし、裁判所は、「宴会での一連の行為も、いわゆる強制わいせつ的なものとは、一線を画すものであり、・・・何らの指導や処分をせず、労働者にとって極刑である懲戒解雇を直ちに選択するというのは、やはり重きに失するものと言わざるを得ない」として、懲戒解雇は無効と判断しました。

ポイントとなるのは、対象となる行為が、「強制わいせつ的なもの」かどうかです。

無理やりキスする、無理やり体を触るなど、刑法上の強制わいせつにあたるような行為がない限り、直ちに懲戒解雇とすることは違法であるという判断であり、他の裁判例とも一致する考え方です。

会社としては、セクハラに当たり得る行為を認知した場合は、まず、事実を詳細に確認することが重要です。具体的には、行為の内容を確認し、被害者との関係も確認する必要があります。特に、被害者の同意の有無によっても解雇の有効性が変わってきますので、被害者に配慮しつつ、事実確認を行うことが重要です。

3 まとめ

以上見てきたように、問題社員への対応には難しい判断が求められます。

特に、いきなり解雇をしてしまうと、解雇が無効と判断され、会社は多額の金銭の支払等のリスクを負ってしまうことがあります。

そのため、問題社員に対して処分を行うとしても、段階を踏んで、まずは戒告や厳重注意などの処分を検討するべきです。

また、問題社員に会社を辞めてもらう場合でも、解雇は最終手段とするべきでして、まずは話し合いから始め、円満に退職してもうようにするべきでしょう。

問題社員対応でお困りの場合は、まずは弁護士にご相談ください。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 権田 健一郎

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