
うつ病や適応障害を理由に休職していたの従業員の復職に関する労務管理で特に心配なことは、「復職後の精神疾患の再発リスク」であります。
本ページは、うつ病などの精神疾患の再発トラブルを防ぐために会社として行うべきポイントについて解説しております。
うつ病や適応障害を理由に休職していた労働者から「復職したい」と言われたとき、どう対応すべき?

労働者からこのように言われたとき、すぐに復職させる判断をしてしまうのは好ましくありません。
会社としてするべき対応として以下のことが考えられます。
1 復職の可否について主治医の診断書を提出させる
復職が早くなりすぎて再休職してしまう可能性があることから、復職の可否について、必ず、主治医の診断書を提出させることをオススメします。
また、休職者に診断書を会社に持参させることをオススメします。
その際、休職者と話をし、現在の生活の状況・服薬の内容・本人の体調などを聞くことで、復職できるか否かの判断材料の一つとすることができます。
2 労務担当者が休職者本人と一緒に主治医を訪問して、復職に関する注意点をヒアリングする
復職後に予定している業務の内容などを主治医に伝えて、・復職させて症状が再発する危険性がないか・復職後に配慮するべき点がないか・服薬内容との関係で注意する点はないかなどを確認することで、会社としても今後の当該従業員に対する接し方について理解を深めることが出来ます。
3 休職者に「通勤訓練」を実施させ、その様子を報告させる
通勤訓練とは、自宅から職場まで通常の出勤経路で移動し、職場付近で過ごすことで、生活リズムの回復や体力・集中力の向上、社会との再接触を図ることをいいます。
1週間程度の期間を定めて、職場付近で一定の時間を過ごして帰宅するということができるかどうかをチェックすることが重要です。
復職の可否の最終判断として行う「試し出勤」とは?

主治医が復職可能と診断し、通勤訓練も時間通りできているというときは、復職の可否の最終判断をするための「試し出勤」を行うことをおすすめします。
試し出勤とは、復職の可否の判断のために、復職希望者を試験的に会社に出勤させ、会社で一定の時間を過ごさせることをいいます。
なお、試し出勤をさせる際に注意すべき点がございます。
1 事前に試し出勤の期間を決めておく
2 試し出勤の期間中は無給であることを説明し、休職者の了解を得る
3 試し出勤は正式な復職ではなく、試し出勤の状況も踏まえたうえで、復職の判断を会社がするための制度であることについて了解を得る
4 最初は週1回、午前中のみといった短い時間とし、徐々に時間を長くしていく
5 試し出勤の期間中に休職者に対する担当者を決めておく
2についてですが、「試し出勤」は業務ではなく労働に対する「賃金」は発生しないことから、その旨を事前に休職者に伝え、了解を得ておく必要がございます。
なお、休職者は、試し出勤の期間中も、傷病手当金の受給を続けることができます。
また、5についてですが、会社で、試し出勤の期間中に休職者を見守る担当者を決めておき、担当者が休職者とコミュニケーションをとり、その様子についてメモを取っておくことで、試し出勤終了後の復職判断の判断材料とすることができます。
復職後の労務管理で注意すべき点

復職後の労務管理について、注意すべき点について以下のようなことが考えられます。
1 最初は午前中の出勤のみとし、徐々に勤務時間を長くするようにする
2 最初は、精神的な負荷の小さい業務に従事させる
3 復職者に行わせる業務が服薬中の薬との関係で問題がないかを確認する
4 復職後しばらくは残業をさせないようにする
復職者が少しずつ会社の業務に慣れるよう配慮する必要がございます。上記の点の他にも、定期的に復職者と面談をし、コミュニケーションを取ることで徐々に仕事に慣れるような環境づくりをしていくことが必要と考えられます。
まとめ

以上、うつ病や適応障害等を理由に休職していた労働者を復職させる際の注意点について解説いたしました。
休職者を復職させる際、「休職者への配慮」が特に大事です。休職者の「復職したい」という気持ちを汲むことも大事ですが、再発防止のためにもステップを踏むことも大事です。
また、復職させる際の対応についてマニュアル化することで対応の一元化をすることができます。
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